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ピアノを叩けばこつんと鈍くハンマーの音がする。ペダルを踏めばかつんと硬く接地の音が鳴る。どんな楽器でも、特定の音高・音価を持つ「音符」を出そうとしたら、目的の音の他にノイズが鳴る。その宿命は歌声も避けられない。かろうじて免れているように見える楽器があるとしたら、接触のノイズそのものが目的音である打楽器族くらいのものだろう。▼不思議なことにデジタル音響の世界は、この発音ノイズを再現する方向に努力してきた。アナログの世界では避けられない「ノイズ」という本来イヤなものを、容易に除去できる可能性を持ちながら、そうしなかった。より「リアルなノイズを持つデジタル」という倒錯した理想を目指して邁進してきた。一方でサイン波という究極の純粋に向かいながらも、人はとうとう、ノイズ、複雑さ、豊かさ、再現の難しさ、解析不能性――そういう現実の表現欲と虚栄心から逃げ切ることが出来なかったのだ。ノイズこそ音楽である。
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