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「味のあるイラスト」という言い方がある。イラストに限った修飾語ではないのだが、視覚の喩えは万人にわかりやすい。構図、パース、色合い、塗り、線……どの要素を取り出しても決してプロのクオリティではないが、どこか味があるという感覚。プロの丁寧なフルカラーよりも、ある好みの絵師の雑なラフの方が、好きでいつも見てしまう。そういうことがしばしばある。▼素人くさいが故に人を楽しませるというこの逆説的な現象は、何かの道を究めんとする人の前に立ちはだかり、その誰もが迂回する究極の謎である。勉強して、練習して、耳目が肥えて、直感が冴えて、やがて自他ともに認めるハイクオリティを実現したころに、前の素朴な出来映えを懐かしまれて愕然とするという努力の無慈悲な全否定を、私たちは他愛無い回顧主義者の意見として無視するべきなのだろうか。それとも素朴を取りもどす第三の道を探すべきなのだろうか。味のある作品とは何なのだろう?
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