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彼らは細菌学者だった。細菌を研究する化学者だった。細菌を研究するには、細菌の培養基を作らねばならぬ。これが大変だった。培養にはいつも天敵がいた。培養基が育つ前に細菌を殺してしまうカビだった。同業者の間では広く知られた頭痛の種だった。「またやられたよ。」「うちもだ。」▼しかし、それこそ我々の求めているものではないのか。気がついた一人が世紀の発見者となった。つまるところ、アレクサンダー・フレミングが発見したのはペニシリウムの「存在」ではなく「価値」であった。細菌に対抗しうる存在を探すために細菌を抹殺するカビと戦う日々に、彼は別の機会を見出した。そのときからペニシリウムは障害ではなくなった。類稀な資源へと姿を変えた。人類を救う貴重な財産となった。▼石油しかり、穀物しかり、世の中、元から資源であった物はない。最初はみんな厄介者だ。厄介者が価値を生んだとき、資源に化ける。手持ちの頭痛を数えてみよう。
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