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ベートーヴェン全集を買ったとき、自分のベートーヴェン・リスニングはとりあえずここから始まるんだと思った。1枚100円にも満たない投げ売り価格の廉価版、演奏もたいしたものは収録されていないだろう。それでもいい。全曲をいつでも聴けるようになるのだから安いものだと思っていた。▼あれからしばらくして、様々な奏者のピアノソナタをそれなりには聴いてきたつもりだが、ついに投げ売りのブレンデルを超える演奏は、少なくとも29番と32番に関しては出会えていないのである。廉価版なんてとんでもなかった。オーソドックスの天才。全集というリファレンス的な商品にとっては最高の人選ではなかろうか。他の一癖も二癖もある演奏を知っている今なら、尚更そう思う。▼他人の追随を許さないところまで極めれば、基本に忠実であることもまた最強の個性である。この先、”好みの奏者”はいくらでも見つかるだろうが、ブレンデルへの敬意は変わるまい。
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