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フライング気味だが、ホロヴィッツの月光は素晴らしいと思う。これまでグールドの演奏が最も理想に近かったが、今ではホロヴィッツの演奏がいちばんいい。第一楽章、第二楽章、第三楽章、全て通して◎である。とくに第三楽章は、出だしから駆け上がり着地点のスフォルツァートを完全に無視して広く広く抑揚の幅を取ったり、ところどころに強烈なスタッカートを混ぜてフレーズに勢いを与えたりと、他に類を見ない独特なアレンジングが圧倒的である。「なるほど。とにかくなんか凄いぞ、これは!」▼32番のように、正統派の解釈でまっすぐ弾くことが最高の演出になるようなナンバーもあるが、月光に関しては逆に、解釈のオリジナリティと派手さが活きてくるような気がする。それは激しい第三楽章に限らず第一楽章にしても、極限までシンプルだからこそ、どこかに大胆な試みやハッとするような指使いがないと飽きてしまうのではないか。そう思わせる名演である。
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