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帰路、駅で妙な人を見た。その妙な人がもし見ていたら、妙な人呼ばわりして申し訳ないのだが、終電が去り降車した人も改札の向こうへ捌けた無人に近い深夜の駅、階段の踊り場で垂直に立ち止まり、私には目もくれず無心でポテトを貪り食う姿は、なにしろ妙としか言いようがなかったのである。足元には食べ損ねたポテトの残骸が散らばっていた。危険な感じさえする光景だ。▼私はただ、黙って横を通り過ぎただけで、振り返って顔を見ることもしなかった。触らぬポテトに祟りなし。しかし、その後、遊歩道に出るや闇夜に輝く白のヘッドフォンを装着し、だいぶ打鍵の呼吸を覚えてきたルービンシュタインのバラード第一番のビートを顎で刻みながら、指揮棒代わりにホット十六茶のペットボトルを振り回して歩く男の姿は、これまた第三者から見たら十分すぎるほど不気味であっただろう。そういう私にポテトの巨人をとやかく言う資格はあるまい。彼もまた長身であった。
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