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アステカの帝王モンテスマはチョコレートを飲んでいた。嗜好品ではなく神聖なる神々の飲み物として。ホットココアのように甘くはない。カカオ豆をすり潰して唐辛子を加えたドロドロの苦い液体である。アステカの人々にとって、この飲み物は不老長寿の薬と思われていた。▼これをコルテス将軍がスペインに持ち帰ったのも、炎症に効き、解毒作用があり、疲労回復にも役立つ素晴らしい薬としてであった。チョコレートが今の甘ったるいイメージを持つに至ったのは、あくまで砂糖を加えて後のことである。チョコレートドリンクがあっという間に上流階級から労働者階級まで広まり、コーヒーハウスの定番となったのは、チョコレートが苦くてまずかったからではないかとさえ言われているのだ。十七世紀は砂糖革命の真っ只中。人々は砂糖を舐める口実に、《健康に良い》チョコレートを甘くして飲んだのではないか――。▼『砂糖の歴史』緩読中。なんとも苦い歴史である。
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