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その昔、恐らくは聖歌だろうが、歌を歌うということだけ考えたとき、考慮すべき最低音は「ラ」だった。したがって、理論家はこれをAと名づけた。そこから音がひとつ上がるたびに、ABCD……とアルファベットが増えていく仕組みである。▼やがて旋法が整理され、長調や短調といった概念が確立してくると、C――今で言うところの「ド」――を基準にした方が、何かとわかりやすかろうということになった。しかし今まで使われていた呼称を変えてしまえば諸々問題も出てくる。表記の方はそのままでよかろう。こうして中途半端なCから始まる「ドレミファソラシド」が生まれた。さらに、アルファベットのAをいろはの始点にした結果、日本語表記の「ハニホヘトイロハ」も生まれた。▼システムの変更時、変え損ねてしまった表記法。現代の音呼称は、言わば音楽のレガシーコードというわけだ。「シ」をめぐるドイツ式とアメリカ式の喧嘩といい、面倒なことである。
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