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昔、何かの将棋の本に書いてあった。序中盤で駒得を重ねて圧倒的な優位を築き、もう相手には攻撃の手段がないから守りを固めるだけで勝てる――そういう状況になっても、自玉のまわりに金銀を貼り付けるような真似をせず、最小限の駒で守り、最小限の駒で攻めきることを考えていないと、将棋はなかなか上達しないと。▼当たり前のようで含蓄の深い助言である。確実な勝利を危うくしてまで修行に務めなくてもいいじゃないか。そういう攻防は序中盤で圧倒できない互角な相手とやればよい。そんなふうに考えてしまうのが通常だ。しかし、その感覚がすでに間違っているのである。序中盤で圧倒できる相手を最適に詰めきれる棋力がないと、序中盤で圧倒できない相手には全く歯が立たないのだ。この「ぎりぎりを読む力」の有無を隔てる壁は確かに存在していて、相当厚い。勝てる相手と勝てない相手がきっぱり分かれるようになってきたら、思い出してもよい真理である。
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