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クラシックとポピュラーは印象で言われるほど対立はしていない。実際、二十世紀以後に勃興した様々な音楽流派を並べてみると――現代音楽、十二音技法、ジャズ、ミニマリズム、クラブミュージック、等々――ポピュラーミュージックほど色濃くクラシックの流儀を受け継いでいる領域はない。第一、クラシックは十九世期末、すでに十分「ポピュラーな」娯楽だった。それがいっそう大衆に浸透し、多様化しただけのことである。世界はまだ、言うほど西洋音楽の系譜から逸れてはいないのだ。▼テオドール・アドルノは、かつてポピュラー音楽を「エヴァーグリーン」と呼んだ。常緑樹のようにいつでも新しく見えるが、しかしいつでも同じものである、そんな皮肉である。しかし、あらゆる木々が立ち枯れていく砂漠化のシーンに常緑樹の栄える一角があるのなら、それはけっこうなことではないか。同じもので満足しつづけられる時期もある。今は繰り返して待つ時期である。
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