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紀伊国屋へ行く。筑摩書房から出ている文庫版の漱石全集が一巻だけでも試し読みできないかという目論見がもともとであったが、その希望は早々に挫かれたので、残り時間は著者にこだわりなくゆっくり文学棚をめぐってきた。▼速読ブームが静かに去り、あらためて遅読・精読の重要さが説かれるようになってきた昨今。昔も速読したわけではないが、精読とは言えないスピードであっさり通り過ぎた作品たちを、今いちど読み返してもいいかなという気持ちになってきた。漱石然り、荷風然り、小林秀雄然り。しかし同時に、いざ再読と思うと猛烈に腰が重くなるのも確かだ。▼実際、気に入った音楽は何十回でも何百回でも聴くのに、気に入った本を二度読むのが億劫とはどういうことなのか。時折考えてみるものの明確な回答を出せずにいる。再読に時間を割くなら「他に読みたい本」がいくらでもあるのに大して、「他に聴きたい曲」というのはあまりないからかもしれない。
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