400
Post/Edit Page
三島由紀夫『金閣寺』読了。まとまった感想は読書ノートに記すとして、ここには断片的な雑感を重ねておく。濾過されていない分、純な感想である。▼暗い。とにかく暗い。言葉が美しいせいでいっそう暗い。表現力は見事。平明といえば嘘になるが、古典的ながら現代人にも十分通じる無理のなさ。知らなかった熟語の意味をいくつも発見した。名作らしく多面的な解釈が可能で、またそうした解釈を誘う。美について、狂気について、人生について、どんなに俗っぽく浅い考えであれ、ひとまず自分で考えてみずにはいられなくなる。こういう自己の特殊性を守るために肯定する心理、高校生くらいのときに一度は通るよな、と頬杖をついてみることだってそう。つまりは術中である。私は金閣寺をあまり美しいとは思わないが、恐らくこの小説にとって、金閣寺は別に金閣寺でなくともよかった。言わば金閣寺を出汁に、自分の美学をふんだんに盛り込んだポットシチューである。
pass:
Draft