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社員食堂のチープなうどんを食べる。▼数ある食堂メニューの中でも、私はとりわけこのうどんが気に入っている。典型的な関東風の濃いつゆに、スーパーで売っていそうな格安麺を投入、おばちゃんの気分で茹で加減が決まり、わかめとかまぼこが申し訳程度に添えられた三百円の素うどんだ。これに七味唐辛子を多めに入れる。濃い味の汁に辛さが絡んでいっそうジャンキーな味わいになる。関西の人はきっとこれをうどんとは認めないだろう。うどん風の何かである。しかし、なぜか妙に旨い。▼客観的に見て美味でない食べ物が主観的に旨いと感じられる場合、その人はその品を小さい頃から食べつけていた可能性が高い。出身地方を遠く離れてきた人々が、口を揃えて故郷の飯ほど旨いものはないと主張するのは、単に過去が美化されているばかりではないということだ。▼私にとってもこのうどんもどき、昔どこかで食べたことのある味である。この記憶の遡行が美味なのだ。
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