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十年以上の長きにわたり、一度も開けられることのなかった扉をひらく。家の裏手に通じる台所の扉である。▼そこは2m級の古く高い棚に阻まれて、幾年も大掃除をくぐり抜けてきた禁断の領域だった。人の住まう家の中で最も廃墟に近い地だ。案の定、俄仕込みの文章では形容しがたいほどの汚さで、もはや漂白剤も薄めている場合ではなく原液での活躍となった。黒また黒。ウエスが山のように積み重なっていく。▼台所をまるごと磨き上げたときは日も落ちていた。朝から調子が悪かったこともあってふらふらになったが、床から壁までピカピカになったのは気分がいい。大掃除を妨げていた巨大な壁も取り払ってしまい、寝室で使っていた小さな本棚を代わりに据えたので、今度からはこまめに掃除も出来ると思う。五歳からの付き合いで心情的に捨てにくかった白い本棚に、食器棚としての第二の人生が拓けたのも良かった。夏休みのオトナの宿題、まずはひとつ制覇である。
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