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「関東のひとつ残し」という言葉がある。お菓子や揚げ物など皿に盛られた食べ物を皆で分け合って食べるとき、誰も最後のひとつを取ろうとしない状態を揶揄した表現だ。最後のひとつにがっつくのがはしたないからとか、遠慮して譲り合っているからとか、皿が空になると場が持たなくなるからとか、理由には諸説ある。▼「関東の」というくらいだから関東に特有の性質かと思いきや、そうでもない。関西には関西で「遠慮のかたまり」という、同じく最後のひとつを取らずに残すことを表す語彙がある。それどころか「越後のひとつ残し」だの「肥後のいっちょ残し」だの、調べれば調べるほど各地方の言い換え表現が出てくる。日本全国どこでも同じということだ。▼日本人の特性なのか、世界共通の普遍的な人間特性なのか、それは各国の言語を閲してみなければわからないが、まさしく最後にひとつだけ残された小さな春巻きをめぐる居酒屋の会話としては上出来であった。
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