400
Post/Edit Page
今日は三十五度。明日は三十六度。暑い。暑すぎて語彙も減る。思考も鈍る。あらゆる感情が暑いという直接的な感覚で上書きされていく。もはや情緒もへったくれもない。とにかく暑いのだ。暑くて汗が出るのだ。▼私が体験した日常生活中で最強の猛暑は、たしか大学一年生のときだった。板書をしていた熱力学の教授が、歩いていると氷屋の幻が見えるのは私だけかな、などと不思議な発言をし出すほど朝から蒸す日だった。授業が終わり昼。食堂の前でいつもの面子と集まると、意識が朦朧とすることに気がついた。異常な日射量。脳が茫然としていて、日陰に逃げるとか、まともな判断も即座にはできない状態になった。皆同じような状態で、ちょっとおかしくないかと囁き合った。周りも一様にとまどっていたと思う。食堂で何を食べたかは覚えていない。▼その日こそ東京で三十九・五度を記録した伝説の猛暑日だったそうだ。あれに比べれば今はまだ序の口と耐えられる。
pass:
Draft