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鬼速で本を読み続ける。三冊目。丸暗記できるほど若くないが、重要なポイントはなんとなく浮いて来る。このへんが年の功である。▼記憶力は、認めざるを得ないが、全盛期に比べると見る影もなく落ちた。ナビエストークス方程式の導出が一目で脳に染み込んできた、あの奇跡の夜のような吸収力は、もう死ぬまで発揮できまい。憶えるだけでなく、思い出す力もガタ落ちだ。慣れ親しんだはずの物の名前が出てこない。人の名前も抜けている。代名詞、代名詞。「あれがそこにあったはずだけど、あの……あれが……。」▼だからこそ、ここから先は勘と経験とセンスで補っていくしかない。全てを憶えられなくても急所がわかる。思い出せなくても目的が果たせる。そういう方向に切り替えていくしかない。というより、今のうちにそちらのスキルを鍛えておかなければ、いずれ本格的な衰えがやってきたときに立ち行かなくなってしまうだろう。ひとつのシフトチェンジである。
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