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電車内。イヤホンをしてスマホを見つつ、ふと異変に気づいた。妙に人が降りる。発車の加速と同時に、床を口紅のような物体が転がっていく。座席の下に打ち捨てられた持ち主不在のビニール袋。そこから転がってきたようだ。アクセルで左へ。ブレーキで右へ。目で追いかけているうちに、今度は異臭が鼻をついた。目を上げる。近くの座席のサラリーマンが、うとうとしながら盛大に吐いていた。▼ちょうど駅についたので私もぼんやりしながら降りた。出来事はサイアクだが、嫌悪感は先立たなかった。そうして、同年代か少し年上の背広姿のサラリーマンが、そこまで泥酔するに至った背景を思い描いた。何もかも忘れたくて暴飲したのか。昭和気質の上司にいやいや飲まされアルハラを受けてきたのか。あるいは……たとえそうでも、公共交通機関で吐瀉物をまき散らかすことは許されないが、これが終電の日常的な光景なら、居合わせた人全員にどんまいと言いたくなった。
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