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部屋の外からドアノブに手を伸ばして、勢いよく引っ張りドアを閉めた。同時に、電気を消していないことに気がついた。いけない、電気を消さなくては。部屋の中のスイッチに手を滑り込ませた。至極当然の結果、慣性で閉まろうとするドアに指を挟まれた。▼さいわい怪我はしなかったが、かなり痛かった。間抜けな話だ。しかし、ここまであからさまではないにしろ、こういうことはしばしばある。辻褄の合わない行動をしたために失敗するパターンだ。たいていは二つ以上の些細で日常的な行動を、めったにしない組み合わせで起こしたときにやらかす。今回もそうだ。ドアを閉めてから電気を消すなんて、まずやらない。▼人間は――少なくとも私は――自分が意識している以上に、知性ではなく経験によって日常生活を維持しているのだと、あらためて感じた。きっと老いの衰えに抗うには、そうするしかないのだろう。知性の選択と集中が私の知らぬ間に行われているのだ。
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