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「春、王の正月戊辰、朔、宋に隕石あり、五つ。是月、六鷁退飛して宋の都を過ぐ。」古い文章技法のひとつに「五石六鷁」がある。雑誌名は忘れてしまったが、以前岩波の雑誌エッセイでこれに関する解説が載っていた。▼「なぜ、まず隕といい、次に石というか。隕石とは記聞である。まず何かが隕ちた音が聞こえる。次に調べてみて石と知る。次に数えてみると五つである。だから、隕石……五つという文になる。」「なぜまず六といい、次に鷁というか。六鷁退飛とは記見である。まず何かが飛んでいるのが見える。六つである。よくみると鷁である。なおもよく見ると後方へ飛び去ってゆく。だから六鷁退飛……という文になる。」▼つまりは現実の経験に即して言葉の前後を整える、その整え方の技法である。このような語り口は、人間の認識のプロセスを正しくなぞっているために、しぜん読み手により鮮明なイメージを与え、描かれている場面の臨場感を向上させるのだ。
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