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「私のニンフェットのために、綴りを考える。まず、もっとも明るく澄んだアルファベットは'L'だ。それに’-ita’はどうだろう、この接尾辞はやさしさに溢れている。どちらも譲れないと思った。そうして『ロリータ』になった」。「Annotated Lolita」に見える記述である。適当に省きつつ、勝手に意訳した。▼必ずしも名誉ある形でないとはいえ、ロリータという単語が今日までほとんど一般名詞として生き長らえている背景には、こういう丹念で執拗な音へのこだわりがあるように思う。ナボコフの文章を音読すると、その音の流れの美しさに驚かされる。▼「文字の音が色に結びついていた」というナボコフはどうやら完全な共感覚を持っていたらしい。自伝に曰く、英語の'a'は「長い風雨に耐えた森のような黒」に、フランス語の'a'は「つややかな黒檀の色」に見えたそうだ。彼の音に対する卓越したセンスには、このような幾分サヴァン的なところもあったのだろう。
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