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アンブローズ・ビアスの『悪魔の辞典』が筒井康隆の新訳で出ているらしい。岩波訳と比較してみても面白いかもしれない。そういえば先日戦争描写について触れたとき、後から思いだしたものがあった。「ビアス短篇集」に登場する、チガモーガの戦場で躯の兵士達を率いる少年の姿である。▼ビアスを初めて日本に紹介したのは芥川龍之介。短篇『藪の中』も、このビアスの『月明かりの道』から着想を得たものだとか。彼曰く「短編小説を組み立てさせれば、彼程鋭い技巧家は少い。」鋭いし、上手く纏め上げられている。とにかくシャープな短編を書く人だ。▼ビアスは生涯の主要な時期を南北戦争の激戦地で過ごした。読み手に非日常という感覚を起こさせないほど生々しい、死体あるいは瀕死体の平然とした描写は、そこで磨いた観察眼によるものだろう。くわえて言葉の達人でもあった彼のテキストは、同世代人にはたいそう重宝されたらしい。十九世紀短篇の名手である。
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