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楊万里の五絶「感秋」にこういう一節がある。「書冊秋可讀、詩句秋可捜。永夜宜痛飲、曠野宜遠遊。」(書冊秋に読むべく、詩句秋に捜すべし。永夜痛飲に宜しく、曠野遠遊に宜し。)曰く、読書は秋にせよ。「読書の秋」はどうやら近代人の生み出したセールスコピーというわけでもないらしい。▼書店の統計によると、本がもっとも売れる季節は夏である。夏休みがあるからだろう。しかし夏休みを遊び尽くして読まず仕舞いになった本たちは、やはり秋に消化されることになる。過ごしやすい涼しさに自然気力も湧いてきて、不完全燃焼した夏の残りのエネルギーを発散するには格好というわけだ。▼句は「請ふ双行纏を弁ぜよ、何れの処にか一丘無からん。」と結ばれる。どこかに素敵なところがあるはずだから、さあ早く靴を履いて出かけよう――そんな逸る気持ちだ。五絶に言う通り、読書に限らず創作も、酒も旅行もいいだろう。進んで楽しもうとする人に、秋は優しい。
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