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襖は「臥す間」即ち寝室を語源に持つ。もとは衾(ふすま)であり寝床を指していたものが、その寝床の障子を衾障子と呼んで、いつか障子の方に襖の字があてられた。中国由来の障子と違って、れっきとした日本生まれの名前である。▼我が家に襖はない。和室とリビングの境にないでもないが、とても襖と呼べる代物ではない。現代にあっては都会の棲家で襖だの襖絵だのにお目にかかるのは、ちょっと難しいだろう。芸術から生活へ逆輸入の気配もなし、特別リバイバルの兆しがあるでもなし。実感としてはほとんど純粋アートだな、と思った。▼「隠していながら鍵も掛けずに閉じているだけ、というエネルギーの溜め方が魅力的」と鴻池朋子は言う。カーテンにはない力強さも兼ね備えているのは、襖には閉めたときのぴしっという、あの密閉感があるからだろう。開けられるが、開けてよいものかと戸惑わせる、パンドラの箱的な躊躇がある。つくづく不思議な遮蔽物である。
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