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夢を追い続けること。それは素敵なことだ。とはいえふつうは途上で、何らかのトレードオフにぶつかる。そうして少しだけ夢を切り崩す。いつそうするか、どれくらい切り崩すか、その程度に差はある。けれどもしまったく手をつけないとしたら、それは狂的と言われるべきだろう。▼サマセット・モーム「月と六ペンス」の主人公、ストリックランドはそういう≪狂的な夢追い人≫の典型である。彼は絵を描くためには、己の良心の呵責さえ鼻で笑って見せるほどの徹底したエゴイズムを持っていた。自分も他人も、全てを犠牲にしながら夢を追い続けていた。▼「絵を描かなくてはならんと言ってるのが分からんのかね。自分でもどうしようもないのだ。いいかね、人が水に落ちた場合には、泳ぎ方など問題にならんだろうが。水から這い上がらなけりゃ溺れ死ぬのだ。」月を仰ぎつづけて、足元の六ペンスに決して視線を落とさないこと。そんな生き方に、憧れはあまり感じない。
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