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ポール・ヴァレリーの「テスト氏」を読む。五回、六回読みなおしてもさっぱり意味の汲み取れない段落があるかと思えば、肝心のところは読みやすく素直に表現されていたりする。こう晦渋と平明に緩急をつけてくるあたりがいっそういやらしい。難解だ。それで結局、テスト氏とは何者なのか。▼彼の人となりは明白である。彼は、自分で必要があると思うことしかしない。純粋な思弁に取り組むために、社会的な決まりごとをことごとく拒否する。そうして「精神と言葉のあいだに蠢くもの」を究めている。いつ何どきでもその間隙に留まることが、彼の生活の戒律になっている。▼彼のような人間は、どこにもいないとも、そこらじゅうにいるとも言える。現実の「雑音」を指向性から完全に除外することができる人間、≪没頭している人間≫は、良かれ悪しかれたしかに増えているようだ。とすれば、現代人はテスト氏めいてきている――そんな捉え方もできるのかもしれない。
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