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オディロン・ルドンの絵を見ていると、不安になりそうな気がして、けれども別段そういう気分にならない。むしろ妙にほっとしたりする。それで、またじっと絵を見る。実に奇妙な感じがする。なんだろう、知らない病気の記録を聞かされている気分だ。▼1878年に制作された『眼=気球』は、黒を好んだ彼の≪モノクローム・パステル≫と呼ばれる作品群の代表作である。ひたすら空を見ながらどこかへ向かって飛んでいく、気球を模した巨大な黒い眼がただひとつ。それでいてグロテスクなところが微塵もない。不思議と誘い込まれるような、親しみの湧く眼なのだ。▼『眼=気球』は1882年のリトグラフ集で『眼は奇妙な気球のように無限に向かう』として再現されている。見比べてみると、後者の方が目玉の淵の陰影が無機的で、草の葉も淡く背景に溶け込んでいる。なんだかモチーフたちが主張するのをやめて、そっと夢の中へ消えていこうとしているみたいである。
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