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「私は、その頃右の如き表題の辞書を繙きながら、……その他の、これに類する種々の物語を耽読した。これらの辞書を飜すと、大概の物語や伝説の中に現れる様々な怪物や魔法使いの術語や素性が明瞭となったので、……別様の興味を誘われるのであった。」▼牧野信一「鬼の門」で、こう紹介された書物の一冊が「クラシカル・マジシャンズ・ボキャブラリイ・ブック」である。この辞書がどうしても欲しくて、探し続けてかれこれ三年になるが、いまだに存在の真偽さえわからない。最近、海外の古辞書を調べる機会があったので、これを機にと徹底的に漁ってみたものの、やはり影も形も掴めなかった。フィクションかとも疑いたくなるが、といってそういう記述にも見えない。▼「民明書房」なども、当時は随分多くの少年が実在を信じていたという。架空のものにあこがれを抱くと、知ってなお満たされない欲心の始末が大変だ。どこかでひょっこり見つかると嬉しいのだが。
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