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紀元前三世紀頃、秦では万里の長城を建設した。「何事も起こらぬよう」人の往来を断つためだ。一方、ローマは街道網を敷設した。「何事か起こったときのため」人の往来を促進するのが目的だ。東西の統治哲学の違いが如実に表れていると思うと面白い。▼ローマはインフラに何よりも柔軟性・機能性を重視した。政略・戦略上重要な都市は最短距離で接続され、軍隊の迅速な移動を可能にした。征服した地にも街道や水道を施設し、人々にその便利さを実感させることで、征服先を共同体としてすばやく取り込んだ。街道網は紛れもなく、ローマがその後も外へ外へと開いていくための動脈として設計・敷設されたのである。▼医療・教育などのソフトインフラも大いに進歩した。このようなローマの徹底的なインフラ整備政策の根底にあった哲学は、≪人間が人間らしい生活を送るための≫事業を為すべしというものだ。現代にもぜひ蘇って欲しい、シンプルで力強い哲学である。
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