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『方法序説』を貸してくれと言われた。累計三度目だ。それなりに名前が知れていてかつ薄いというあたり、哲学へ踏み入る手始めに覗いてみるには格好なのかもしれない。探してくるついでに、昔まとめたレジュメを見ていた。▼デカルトという人はどうも教科書に名を連ねる他の哲学者の面々とは毛色が違う。いい意味で凡人感の漂う人だ。「ほかの人たちと同じくらい頭の回転が速く、想像力がくっきりと鮮明で、豊かで鮮やかな記憶力をもちたいと、しばしば願ったほどだ」と自ら語っているように、少なくとも天才肌といった感じはない。▼彼の優れていた点は、そういう自覚の故に、着眼点や思考順序、判断の基準といったような、本当に基本的で仕事の土台となる部分に細心の注意を払って思索を進めたことにあるのだろう。「きわめてゆっくり歩む人でも、つねにまっすぐな道を辿るなら、走りながらも道をそれてしまう人よりも遥かに前進することができる」のである。
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