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「雪擁山堂樹影深、檐鈴不動夜沈沈。閑収亂帙思疑義、一穂青燈萬古心。」(雪は山堂を擁して樹影深し、檐鈴動かず夜沈沈。閑かに亂帙を収めて疑義を思ふ、一穂の青灯、万古の心。)菅茶山の「冬夜読書」、冬の七絶の中ではもっとも好きな句のひとつだ。山中家を埋めんばかりの雪に降られて、風鈴も鳴らぬ静かな夜更け。取り散らかした書物を整理しながらわからぬところを考えていると、古人の想いに心が通じていくようだ。そんな読書の理想郷である。▼こういうしっとりと落ち着いた読書もしたいものだが、あいにくこのごろは朝と夜との眠たい電車で読むよりほかに機会がない。心忙しいことだ。もっとも昔から図書館や家など静かなところより、喫茶店など人が多くうるさいところで自分勝手に集中するのがかえって好きだったので、喧騒で没頭するのは自分の性には合っているのだが――といってゲームセンターの待ち時間に読まれては、古人も眉を顰めそうである。
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