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人間工学系のコンテンツを逍遥していたところ、ユクスキュルの「環世界」への言及があった。なるほどたしかに由縁のある話だ。彼の著書『生物から見た世界』は、生物の行動を生物独自の知覚が生み出す世界から説明しようとする、かなり面白い本である。マダニの生活や軟体動物の見る風景、味で松葉の上下を判別するミミズやツタノハガイの帰巣など、印象に残った話はいくらでもあるが、もっとも強烈に記憶に残っているのはめんどりとひなの機能環に関する観察だ。▼片足をつながれたひなが鳴きわめいていると、めんどりは声のする方へすぐさま駆け寄って、架空の敵を激しく攻撃する。しかしつないだひなに鐘型のガラスを被せると、たとえ目の前で激しくもがいていてもいっこうに気を払わないのである。鳴き声という聴覚標識がないから、ひなに対して特定の活動を始める理由がないのだ。その光景をまざまざと想像して、何となく空恐ろしく思ったのを覚えている。
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