400
Post/Edit Page
昔から言われることで、日本人は控えめを好むという。態度のみならず志向全般がそうであって、何かにつけて「匂わせるけどやりすぎない」くらいをちょうどいい、かっこいいとしているところがある。私たちが漠然と感じ、恐らく共有しているであろうひとつの美意識「いき」というやつだ。九鬼周造は『「いき」の構造』で、解釈学的現象学を下敷きに、この意識現象を見事に解剖してみせた。▼「いき」とは≪華やかな体験に伴う消極的残像≫であると彼は言う。この残像ということばが、「いき」の性質を極めてよく言い表していると思った。黒味を帯びた飽和の弱い、冷たい感じのする色は、確かに人の感覚にそのような残像をもたらす効果を持っているし、匂わせるとは過去を内に宿したまま現在に生き、未来を予感させることに違いない。「温色の興奮を味わい尽くした魂が補色残像として冷色のうちに沈静を汲むのである。色に染みつつ泥まないのが「いき」である。」
pass:
Draft