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久々にぱらっと来た。天気予報は言っていなかった気がする。いつか放り込んだまま出し忘れの折りたたみ傘があって助かった。小粒の霧雨とはいえ、あまり冷たい水に打たれては、長い帰路のうちに風邪をひいてしまう。▼冬の雨は「ふゆのあめ」と読んで綺麗に五文字ゆえ、俳句や川柳に読まれるときはたいてい上五か下五に置かれる。一茶「冬の雨火箸ともして遊びけり」や、荷風「垣越しの一中節や冬の雨」といった具合である。しかしここにこれはと思う歌がある。俳句ではないが藤原為家の短歌「冬の雨の名残のきりはあけ過ぎてくもらぬ空にのこる月影」だ。▼あたまに置いて雨で切らず、あえて六文字として「名残のきりは」とつなげているところが独特の雰囲気をつくっている。「冬の雨の名残のきりは」でくいとやさしく腕を引き、「あけ過ぎ」る時の流れに「くもらぬ空」へと誘われて、はたと辿りつくのは「のこる月影」。そんな気持ちのよい音の浮遊感である。
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