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金属はどうして冷たく感じるのか、と聞かれた。接触面の冷えやすさの問題だろうと思って「熱伝導率が高いからじゃないか」と答えると、「比熱は関係ないの?」と言う。「ずっと握っている分には、比熱というか熱容量が効いてくるね。」もちろんそうだ。サイズは同じくらいでも、木片の十倍重い鉛棒を握れば熱容量は三十倍だ。全体を体温と同じ温度にするまで、三十倍の熱を要する。「なるほどね。」▼その場はそれで納得したが、よくよく考えてみると「金属を触ると木片より冷たく感じる」と思うことには他の理由もあると思った。というのは、こういう話をするときに私たちが想像する「金属」は、棒状であれ板状であれ、ふつう表面の非常に滑らかなものだということだ。表面が滑らかということは、同じ指先で触れたときも実際に接触する面積が大きいということであり、でこぼこのために実際の接触面が小さくなる木片等に比べて熱の移動が起こりやすいのである。
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