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色は光の波長によって決まる。では私たちが屈折率の違う水中でも、空気中と同じ色を感知できるのはなぜか。ヘルムホルツは著書『生理学的光学』で、人間は色をエネルギーによって感知していることを明らかにし、この疑問に答えている。光のエネルギーは振動数だ。振動数は屈折率によって変化するものではない。――この話に、一旦は納得した。しかしすぐに釈然としなくなった。▼網膜の錐体細胞は、特定のエネルギー幅の光を吸収する細胞である。したがって人の目がエネルギーによって色を感知していることは間違いない。しかし冒頭の疑問は、そういうセンサーの性質以前の問題ではないだろうか。というのも、光が大気中を通って来ようが水中を通って来ようが、網膜の視細胞が観測するのは常に硝子体の屈折率における波長だからである。外界がどうあれ、色の観測環境は変わらないはずだ。色は光の「真空中の」波長によって決まる、というのが正しい表現だろう。
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