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DIY運動が盛んになった頃のこと。棚や小机を作るには、板に穴を開ける必要がある。工具のドリルは飛ぶように売れた。あるとき、向かいの店がドリルの先を二本つけて売り始めた。ドリル屋は負けじと、同じ価格で三本と謳った。すると向かいは四本と言う……揃って疲弊していく未来は確実だ。▼セオドア・レビットは、このような近視眼的な戦略をマーケティング・マイオピアと呼んだ。マイオピアは近視を意味する英単語だ。マーケティング戦略はしばしば、特定の競争相手や製品にこだわるあまり、大局的な市場のニーズを見失ってしまうことがある。顧客が真に必要としているものは何か、常に広い視野で考えなさいという警鐘である。▼ドリル屋はついに自分がマーケティング・マイオピアに陥っていることに気がついた。そうして「顧客が本当に欲しているもの」をもういちどしっかりと考え直し、戦略を改めた。どうしたか。穴の開いた板を売りはじめたのである。
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