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速読とかするのかい、と先輩に聞かれたので「いえ、一分に一頁くらいのもんです」と答えた。ずいぶんゆっくりなんだね、と言われたが、そんなものじゃないだろうか。もっとも他人の読書スピードについては、よくわからない。▼読書・執筆態度については、佐藤一斎の言葉が好きだ。「読書は宜しく澄心端坐して寛く意思を著くべし。乃ち得ること有りと為す。五行並び下るとは、何ぞ心の忙なるや。作文は宜しく命意立言して、一字も苟にせざるべし。乃ち瑕無しと為す。千言立ちどころに成るとは、何ぞ其の言の易なるや。学者其れ徒らに顰に才人に効いて、以って忙と易とに陥ること勿れ。」一度に五行も読み下す人がいるというが、なんという心の忙しない話であろう、と言っている。速読には速読の意味も魅力もあるとは思うが、面白いことにいつの時代でも心ある人からは蔑視されるようだ。エミール・ファゲも『読書術』で、ゆっくり読むことを至上命題としている。
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