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足りないものを丁寧に添える。余分なものを毅然として除去する。添削という仕事は、終わりが見えない分、いつもたいへんだ。それでも足して行く方は、言いたいことがなくなれば手も休まるからまだいい。つらいのはやはり、削る方だ。このあたり推敲に頭を悩ませたことのある人は、同意してくれるものと思う。▼文章を削ることについて、あるミステリー作家は次のような注意を促している。「君は肉屋か、それとも外科医か。」これはなかなか骨をついた助言だ。肉屋なら規定の重さになるまで切ればいい。だが、文章の添削は外科医の仕事である。外科医は傷つけてはならぬところを知らなければならない。文章を削るということは、意図する効果や主張の説得力を損なわないような最小の文字数を探す事である。大切な神経に触れてはならないのだ。終わりの見えない不安に負けて、削れるところは削ってしまえと、つい腹を括ってしまう心を掣肘し続けなければならない。
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