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「猫が思索しないということは、はっきり知っている。それでも猫は、実際思索していると同じくらい深遠な様子をしている」「暗い部屋の中で、一条の太陽の光線を見ること。それは埃で一杯だ。太陽の光線ほど汚いものはない」ジュール・ルナールの日記に見える記述を、小林秀雄「僕の手帖から」より孫引きした。人の手帖から日記を引用する記事。なかなか妙なものである。▼もうすっかり覚えてしまった二文だ。それほど執拗に、私は何度もここへ立ち戻ってきたのだろう。リアリズムのエッセンスがぎっしり詰まっているこの手本についてもういちど頭を捻ってみることで、リアリズムとは何ぞやという疑問に鳧をつけるのである。つまりこういうことなんだ、と――手本と思わば思え。そうして小林秀雄の付言もまた、簡潔かつ核心を突いていていい。「さて、読者はきっとこの二つの言葉を皮肉な意味にとっただろう。駄目だ。ルナアルはありのままを書いているのだ。」
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