400
Post/Edit Page
ピアノの基礎的な練習に「ハノン」がある。左右の指が等しく滑らかに動かせるようにと設計された、単純かつ効果的な曲集である。いまこれに名前を借りて「作文のハノン」と呼べるようなものがあるとしたら、それはどんなものだろう、と考えた。「日々習慣的に行える程度の長さである」「覚えた後は機械的に行うことができる」「作文の基礎力養成に役立つ」少なくともこのあたりの特性を備えていなければなるまい。▼作文の基礎力とは何かという問題は残るが、どうやら模写がこれに近そうだということに気づく。習字のお手本模写と同じように、ハノン風に断片化した様々な作家の例文を模写するのである。何も考えずともできるし、繰り返しやっていれば力もつきそうだ。実際、志賀直哉の小説を写しまくって作家になった人もいるというくらい、模写は物書きにとって有効な練習である。自分の作家修行で、もっとも役に立ったのは模写だと断言する作家は少なくない。
pass:
Draft