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スクラップブックをつらつら見ていると、木戸孝允の「偶成」に「明治以降の日本人の句としては良作と思う回顧の詩」とメモ書きが寄せてある。この頃に正しく漢詩の良し悪しを見抜く目利きなど、到底あったとは思えないが、しかし何をもって良作と思ったか。しばらく当時の了見を探っていた。「一穂寒燈照眼明、沈思黙坐無限情。回頭知己人已遠、丈夫畢竟豈計名。世難多年萬骨枯、廟堂風色幾変更。年如流水去不返、人似草木争春栄。邦家前路不容易、三千餘萬奈蒼生。山堂夜半夢難結、千嶽萬峰風雨聲。」▼だいたいこんなところだろう。「年は流水のごとく去って返らず、人は草木に似て春栄を争ふ」「頭を回らせば知己人已に遠し、丈夫畢竟豈に名を計らんや」こういうところが心へ飛び込んできて、相通じるような気持ちになってしまうほど、きっとその頃の私はせわしない生活を送っていたに違いない。あんまり生き急いでいた頃があったな、と少し懐かしく思った。
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