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ピアノはいちど鍵盤を叩いたら、そのあと押しつづけてもいつかは音が消えてしまう。このような音を減衰音という。反対に音が残りつづけるのは持続音だ。たとえばバイオリンは持続音である。ピアノばかり扱っていると、時々この持続音が羨ましくなる。こんなとき音をぐっと伸ばせたらもっと感動的なメロディになるのにと、悔しながらにペダルを踏むのだ。それでも音は消えていく。いったい消えていく音の魅力とはなんだろう。▼第一楽章から第三楽章まで、すべてTACET(休止)とのみ書かれた有名な曲にジョン・ケージの「4分33秒」がある。環境という音楽に耳を澄ませという作者のメッセージであり、真の意味でのアンビエントだ。ピアノの音に耳を傾けることも、これに近いものがある。なくなっていく音に集中し、想いを馳せること。次に聞こえてくる音を待つ期待の高まり、ミュートという持続の増幅。これこそ減衰音ならではの魅力と言えないだろうか。
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