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小林秀雄は作家を目指す若者に向けて「とにかく一流のものだけを読め」と助言した。目利きを養うには一流を知らねばならぬ、そうして一流を知るためには一流にどっぷりと浸かって、悪しきものを遠ざけねばならぬ。▼ところで、湯浅譲二は若い作曲家に向けて、「真に創作的な態度を持ち続けるために」次のことを薦めている。即ち既成概念にとらわれないこと、権威に反対の立場を取ること、視座の転換をはかること、科学的態度も保持すること、好奇心を滋養すること、そうして「騒音も含めあらゆる音響を聴き込む訓練をすること。」▼音楽家はまず音そのものについて専門家でなければならないと彼は言う。これは冒頭の小林秀雄の助言とは対をなしているかのようだ。もちろんどちらの意見にも一理あるのであるが、それにしても騒音を聴きこめというのは面白いアドバイスだと思った。音楽概念の延長を夢見て、第一線で活躍してきた現代音楽家ならではの言葉である。
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