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目を瞑りながら弾き慣れた曲を弾いていると、譜面に散りばめられている仕掛けがいっそうはっきりわかることがある。フーガなどは特にそうだ。なるほど、こんなところもフーガになっているのかという発見である。それまで気がつかなかった音の連なりや旋律同士の関係が、くっきりと浮かび上がって来る。▼曲を練習するとき手元を見ないで弾くよう心がけるのは、初心の練習にはなかなか効果的である。上述のような発見にくわえて、単純に指使いが上手くなる。ことに音が飛ぶときなどはそうだ。目を瞑ったまま2オクターブ以上の飛躍を確実に飛べるようになれば、それだけで難しい曲では役に立つ。▼もうひとつは、跳躍のときや一風変わった指使いのときに、見えないことでふと不安に思う、その一瞬の間の自然さである。目を瞑って弾いているときの音の間は、確かにわざとらしさのない躊躇だと感じるのだ。指を見てしまうと失われてしまう、貴重な息づかいである。
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