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何かがおかしい。皆がそう感じている閉塞された空間で、いま誰かが叫んでいる。「逃げろ!」「ここは危ない!」けれども人々はいっこうに関心を示さない。叫び声が大きくなればなるほど、かえって警戒を強めるばかりである。ざわめき、憶測、不審……では彼らはいつ逃げ出すのだろうか。それは、誰かが避難路を示したときである。「ここから外に出られるぞ!」そのとき、群集はいっせいにそこへと群がっていく。▼偉大な創作物はいかなる物でもいつの時でも、その時代に戸惑う人々の非常口として機能してきた。少なくとも、そうした側面を持っていた。多くの人があるべき姿や取るべき振る舞いを見失ったとき、「こう考えればよかったのか」という解決の糸口を与えてきたのだ。芸術的創作とは、避難路を示す仕事に他ならない――小林秀雄もそんなことを言っている。出口を見つけなければならない。なければ作らなければならない。それこそ芸術家の使命であろう。
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