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トマス・モアの『ユートピア』で、語り手のラファエロ・ヒスロデイはこんなふうに言っている。「吼える六頭女怪だの、狂乱の半人半鳥女怪だの、人を喰らう人喰巨人だの、こういった途方もない怪物くらい、容易にみつかるものはない。ところがこれに反して、公明正大な法律によって治められている国民、となると、これくらい世にも珍しく、また見つけるのに困難なものはないのである。」▼あらゆる民に公平で、いかなる分けへだてもなく、口々に不公平を訴える「虐げられるもの」もいない、そんな国家は歴史上ひとつたりとも存在しなかった。素朴な帰納法からすれば、今後も存在することはないだろう。たしかに、あらゆるシステムは本来的に不平等を助長するために作られている。しかし一方で、国家は出来る限り多くの人間のまとまりを形成しようとするものだ。この矛盾に均衡を求めつづける営みが国家の運営であるとしたら、なるほどややこしいのも無理はない。
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