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人はなぜ老いるのか。この問いに対する回答のひとつとして、リチャード・ドーキンスの取り上げているピーター・メダワー卿の老化説は興味深い。▼老年期になって人を衰弱させる遺伝子があるとしよう。このような宿主を死に至らしめる半致死遺伝子は、通常ならば遺伝の過程で淘汰されていくはずである。しかし人間の繁殖期が二十歳から三十五歳であるとすると、二十歳以前に効果の発現する致死遺伝子はその個体が繁殖期前に死んでしまうため遺伝されないが、三十五歳以降に効果の発現する致死遺伝子は必ず子孫に受け継がれてしまう。▼この論理は純粋に科学的である。彼の説に従えば、私たちは人間という種の繁殖期が大体決まっていることの「副産物として」結果的に老いるに過ぎない。老いること自体に意味はないのだ。繁殖期以降に宿主を衰弱させる遺伝子は、種の好むと好まざるとに関わらず、子孫を通じてどこまでも遺伝子プール内で栄え続けていくのである。
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