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時間のなさについて、最後に弱音らしいことを言ったのはタクシーの中だった。二年前の卒論・修論発表後の祝賀会、六本木の二次会で飲み終えて渋谷までタクシーで帰ることになったとき、たまたま教授と二人乗り合わせた。修士課程を控えていた私は、諸々のことでスケジュールが参っていた。そこへ、課程科目中もっとも重たいと言われる授業がひとつ。準備に膨大な時間を費やす質の高い名物授業で、まさにその教授の担当だった。私はひどく迷っていた。▼「正直、今の生活で先生の授業に出られる気がしません。」すると教授はいつになく真剣な様子で、「タイムマネジメントだよ」とひとこと言った。その沈黙の裏には、出ろとも出るなともなかった。どうしても出られないなら、そこが君のタイムマネジメント力の限界だ。ただそれだけだ。それ以上でもそれ以下でもない――教授の顔はそう言っていた。以来私はただの一度も「時間がなくて」と弱音を吐いてはいない。
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