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ボードレールの散文詩は、きれいに病んだ形而上学である。読みたいと思ったとき以外には読まないでくれ。君の精神に迎合しなければ、たぶんただ鬱陶しいだけだから。そんなふうに囁いているようだ。「この人生は一の病院であり、そこでは各々の病人が、ただ絶えず寝台を代えたいと願っている。ある者はせめて暖炉の前へ行きたいと願い、ある者は窓の傍へ行けば病気が治ると信じている。」▼二十一世紀このかた十年、互いに互いを病人と罵り合う傾向は加速しつづけてきた。それは島宇宙が群島宇宙になったところで変わらない。ただ近頃、その言葉に刺が立たなくなった。言いすぎて言われすぎて、もう各々が自分を何らかの意味で病人であると素直に自覚しているのかもしれない。とうとう寝台を変える気もなくなったのだ。罵り合いはもはやただのじゃれあいに変わりつつある。俺もお前も病人だよなと笑い合うところに、自分の足場を見出しているような感覚である。
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